銀歯が原因かも?金属アレルギーのはなし

      2025/07/24

金属アレルギーとは?

こんにちは、高円寺PAL歯科医院の新井です。

「歯の治療で使われる金属が、体調不良の原因になることがある」

そんな話を聞いたことはありませんか?
実は、歯科治療で使用される金属が原因で「金属アレルギー」を発症するケースがあります。

金属アレルギーは、金属が汗などによりイオン化し、体内に吸収されることで免疫系が過剰反応を起こす「遅延型アレルギー反応」です。
皮膚に触れてかぶれる「接触皮膚炎」だけでなく、口腔内にある金属が原因で全身に症状が出ることもあり、原因が判明しにくいため、見逃されがちなリスクです。

 

どれくらいの人が発症するのか

一般成人の金属アレルギーの有病率

日本皮膚科学会の調査などによると、一般成人の約10〜15%に金属アレルギーの既往があるとされています。
特に女性は男性の約2倍以上と高く、ピアスや化粧品の影響も大きいと考えられています。

 

歯科用金属によるアレルギー症状の報告率(日本国内の例)

歯科補綴物(銀歯、クラウン、義歯の金具など)に起因すると疑われる頻度は1~3%程度とされています。
皮膚科領域では、掌蹠膿疱症患者の約20〜30%が歯科金属との関連が疑われたという報告もあります(東京医科歯科大学などの研究)。

 

歯科治療で使われる金属の種類

日本の保険診療では、以下のような金属が使われています。

金銀パラジウム合金(いわゆる「銀歯」)
主成分は銀とパラジウムで、ニッケルなども含まれます。

ニッケルクロム合金

コバルトクロム合金

アマルガム(水銀を含む合金。現在はほとんど使われていません)


これらの金属は、アレルギーを引き起こすリスクがあるとされています。
特にニッケル、パラジウム、クロム、コバルト、水銀などが代表的なアレルゲンです。

アレルギーを起こしやすい金属とその頻度

金属でも、材料によって、アレルギーの発症度は変わってきます。

金属名 パッチテスト陽性率  
ニッケル 約10~15% 最も多い金属アレルゲン
パラジウム

約5~10%

銀歯(保険のクラウン)に多く含まれ、歯科金属アレルギー源に
クロム

約2~6%

入れ歯のばねなどに使用
コバルト 約1~4% ニッケルやクロムと併用される事が多く、交差反応も
金、銀 1%未満 高純度であればリスクは低いが、合金中では他金属の影響あり
チタン ほぼ0% アレルギー源の可能性が極めて低く、インプラント素材として利用

 

他国での状況

ヨーロッパの一部の国々では、歯科用パラジウムの使用を制限または禁止する動きがあります。
特にアレルギー体質の方や、アトピー性皮膚炎などを持っている方への使用には、強い注意喚起がされています。

 

 

金属アレルギーの症状

歯科金属によるアレルギーの症状は、口の中だけでなく、全身に現れることがあります。


口の中の症状

舌や頬の粘膜にできるただれ・びらん

味覚異常

舌のピリピリ感(舌痛症)

歯ぐきの黒ずみ(メタルタトゥー)


全身の症状

手足や顔にできる湿疹・かゆみ

原因不明の皮膚炎

掌蹠膿疱症(手のひらや足の裏に膿を持ったブツブツ)

慢性的な頭痛や倦怠感(ごくまれに報告あり)


一見、歯科と無関係に思える症状も、実は口の中の金属が原因であるケースがあるのです。

 

なぜ、口の中の金属が原因で全身に影響が出るのか

口の中は常に唾液や温度変化、咀嚼などの刺激を受ける環境です。
この環境下では、金属が少しずつイオン化して溶け出し、唾液に溶けて全身をめぐることがあります。

特に、パラジウムやニッケルなどはイオン化しやすく、体内に取り込まれると免疫系が異物とみなしてアレルギー反応を引き起こします。

 

金属アレルギーの診断方法

口の中の金属がアレルギーの原因になるのは確かですが、湿疹や皮膚炎などの症状があるからといって、必ずしも歯科金属が原因とは限りません。
食品や化粧品中の金属(ニッケル、コバルトなど)、アクセサリー(ピアス・腕時計)、日用品(カトラリー・鍵・スマホケース)など、日常で接触するあらゆる金属に可能性があります。
そのため、「歯の金属が原因かどうかを調べたい」ときは、まずは皮膚科で検査を受けるのが第一歩です。

金属アレルギーの診断で最も一般的なのが、皮膚に金属を貼って反応を見る「パッチテスト」です。
この検査では、アレルギーが疑われる金属(ニッケル・クロム・パラジウム・金・銀など)の微量を絆創膏のようなシートに塗布し、背中や腕などに48時間貼付します。
その後、48時間後/72時間後/1週間後と、複数回に分けて皮膚の反応を観察し、赤み・腫れ・湿疹などが出るかどうかで「陽性(=アレルギー反応あり)」かどうかを判断します。

 

パッチテストの流れ

パッチテスト

① 皮膚科を受診
まずは皮膚科、もしくはアレルギー科を受診します。
※歯科からの紹介状があると、どの金属を調べたいのか明確になり、検査がスムーズです。

② 貼付(1日目)
・医師が、アレルギーが疑われる金属(例:ニッケル、パラジウム、クロム、金、銀など)を含んだ検査用シートを背中などの皮膚に貼ります。
・通常10〜20種類の金属が一度にテストされます。
・貼付後は48時間そのままの状態で過ごします(入浴・激しい運動は禁止)。

③ 1回目の判定(3日目)
48時間後にシートをはがし、皮膚の赤み・腫れ・水疱などの反応があるかを確認します。
これで一次判定が行われます。

④ 2回目の判定(4~7日目)
貼付後72時間以上経ってから、さらに遅れて出てくる反応をチェックします。
​金属アレルギーは「遅延型アレルギー(Ⅳ型)」なので、時間をかけて判定する必要があります。

注意点
テスト中は入浴・汗をかく運動を控える必要があります。
背中に貼ることが多いため、秋〜春の涼しい時期の実施を勧められる事が多いですので、実施時期に注意が必要です。

 

金属アレルギーの予防・対策

1. メタルフリー治療の選択
アレルギーは一度発症すると、原因を除去しても改善しない事もあります。
歯科治療時に予めセラミック、ジルコニアなど、金属を使わない素材を選ぶことで、将来のアレルギーリスクを大幅に下げることが可能です。

2. つめ物・さし歯のやり替え
すでに銀歯などの金属修復物がある場合でも、上記のメタルフリー素材へ交換することで、症状の改善が見込まれるケースもあります。

3. 金属の使用部位に注意
どうしても金属を使用する必要がある場合は、アレルゲン性の低い金属(チタンなど)を選び、使用部位を最小限に抑えることもひとつの方法です。

 

セラミック治療はアレルギー体質の方にもおすすめ

審美性と耐久性を兼ね備えたセラミックやジルコニアなどの素材は、金属を一切使用しておらず、アレルギーのリスクが非常に低いため、アレルギー体質の方や肌の弱い方にもおすすめしています。

さらに、歯ぐきの黒ずみ(ブラックマージン)が出にくく、見た目にも自然な美しさを保つことができます。

 

まとめ

歯科治療に使われる金属が、思わぬ体の不調につながっている可能性があります。
特に原因不明の肌荒れや掌蹠膿疱症などに悩まされている方は、一度「お口の中の金属」に目を向けてみてください。

銀歯や詰め物の金属がアレルギーの原因になることがあります

金属アレルギーは口の中だけでなく全身に症状が出る事があります

歯科治療時にメタルフリー素材にする事でリスクを回避できます

 



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